西洋ルネッサンスのファッションと生活
チェザーレ・ヴェチェッリオ著・挿絵
ルネサンス期のヨーロッパのファッションカタログの復刻版。
1万3000円もする高価な専門書です。
ローマの貴婦人やヴェネツィアのドゥージェ(元首)、ボローニャの娼婦にスルタンの馬丁、ポーランドコサックのコートなんてのが当時のイラストのタッチで描かれててそのまま「モードデザイン集・第五巻」といった感じ。
ヨーロッパ人の装束についてはほぼ正確に記されているのですが、アラブやアジアなど異国の衣装に関しては今日知られる実際の姿とはほど遠い、著者の空想を交えた奇怪ないでたちになってしまっています。
中はこんなかんじ。
当代の武装解除した兵士
ここに示す颯爽として洒落た服装は、サヴォイア公国のヴァッロニコ公がイタリアにもたらした。カルツォーニ(ズボン型脚衣)に似る脚衣は、ブラゲッセ・アッラ・サヴォイーナ(サヴォア風ズボン)と呼ばれる。ハンガリーのセゲド寇掠(1542年)後、ヴァッロニコ公がヴェネツィアを訪れた際にはじめて目にされたこのような服装は、そのとき以来、ヴェネツィアでもフェリッピーナ風と名付けられた口ひげとともに流行りはじめた。
武装解除した兵士は、山が低めのつば広帽を被っている。ほとんどの帽子は銀灰色をしており、飾り帯には一本の羽根があしらってある。――(後略)
なかなかカッコいいですね。
他のページには「日本の青年」
なる項目もあります。
……なんじゃこりゃ??
西洋職人図集 17世紀オランダの日常生活
ヤン ライケン、小林 頼子 他 (2001/08)
八坂書房
原著は1694年にアムステルダムで出版されベストセラーになった「人の営み」(ヤン・ライケン著)という本です。
「人の営み」は当時の都市部で活躍していた職人たち、レンガ積み工とか鍛冶屋とかを描いた版画に宗教的な警句を添えた職業図鑑みたいなものでした。本書では、見開きの左ページにオリジナルの復刻版が、右ページには各職人たちの生活や仕事ぶりについての歴史的講釈が掲載されています。
17世紀といえばオランダが一番輝いていた時代でした。その頃のアムステルダムには船大工や仕立師や大砲職人はもちろん、スケート靴職人とか漂白工(洋服の染み抜き屋さんです)など、実に様々な種類の職人がいたらしいのです。
で、この第94項では船乗りが紹介されているのですが、そこに添えられた警句は
船乗り
東に行くものは西から回れ
ああ 船乗りよ 荒海を開き
良き希望を抱いて 遠く海をかき分けて進み
救い主の元へ旅立つものよ
荒れた海をも行かねばならない
だが 一定方向に舵を取れ
さすれば 危うきに近づくことなし
だそうです。
東インドに派遣されたVOCの商務員がアムステルダムへ生きて還れた確率は50%以下だったそうですし、まあ長生きしたけりゃそもそも船を出さなきゃよいのです。 |